荷物を減らす努力|5人家族の事例から学ぶ「収納に数百万円」の罠【茨城・千葉|間取り・暮らしのアイデア】

家づくりコラム

「片付けても片付けても、家の中にモノがあふれている……」
建築士として数々の住まいづくりやリフォームのご相談に関わる中で、このような切実なお悩みを本当に多くいただきます。

私自身、学生時代から夫婦二人暮らしの現在に至るまで、何度か引越しを経験してきました。荷造りのたびに「こんなにも不要なものを溜め込んでいたのか!」と驚きながら大量のモノを手放してきた過去があります。賃貸時代の引越しは、図らずも持ち物の量をリセットしてくれる最高の機会でした。

しかし、マイホームを建てて定住すると、その「強制リセット」はなくなります。

建築士として施主様と向き合う中で、特に「定住によるモノの蓄積」に直面しやすいのが、ご家族が増えていくご家庭です。以前ご相談を受けたあるお客様は、独身時代から結婚して2人、さらに子どもが生まれて5人家族になられました。荷物の量は単純計算で5倍どころか、育児用品や成長に伴うアイテムが加わり、数倍の勢いで増加。片付けが追いつかない結果、1部屋が完全な「ブラックホール(物置部屋)」化してしまっていました。

定住によって断捨離の機会を失ったとき、私たちは増え続ける荷物とどう向き合うべきなのか。住宅設計の現場で見えてきた「収納に数百万円を払う罠」と、後悔しないための「荷物を減らす努力」についてお伝えします。

引越しという「強制リセット」がなくなるとモノは増える


定期的な引越しがないマイホーム生活では、「いつでも捨てられるから」「また時間がある週末に」と不用品の処分を先送りしがちです。明確な締め切りや強制力を失った家の中では、新しく入ってきたモノがそのまま残留し、静かに蓄積していきます。

定住を手に入れた安心感と引き換えに、私たちは「自ら意識して手放さなければ、モノは一生増え続ける」という恐ろしい現実に直面することになるのです。引越しというイベントに頼らずに、持ち物を点検する機会を自ら作らなければなりません。

1人から5人家族へ。気づけば一部屋が「ブラックホール」に


ご相談をいただいた5人家族のご家庭では、衣類、靴、日用品のストック、学校道具、そして際限なく増えていくおもちゃや思い出の品が、目まぐるしいスピードで家の中に流れ込んでいました。

仕事と育児に追われる毎日の中で片付けが後手に回り、「とりあえずここに置いておこう」を繰り返した結果、一度モノを押し込み始めた部屋は足の踏み場もない物置部屋に。一度「ブラックホール」化した部屋は、扉を開けることすら億劫になり、さらに不要なものが押し込まれていくという悪循環を生み出していました。

建築士目線で暴く。モノの収納のために「数百万円」を払う違和感


こうした「収納不足」のケースに接するたび、私は建築のプロとして、ある恐ろしい事実をお客様に指摘せざるを得ません。

「不必要なモノを保管しておくために、数百万円をかけて家を広く建てていませんか?」

住宅の建築コストや購入価格は、床面積(坪数)に比例します。一般的な坪単価から試算すると、わずか6畳(約3坪)の部屋を1つ作るだけでも、数百万円単位の建築費用がかかっています。さらにそこへ、毎年の固定資産税や住宅ローンの金利、将来の外壁・屋根などの修繕費まで乗っかってくるのです。

着ていない服や何年も開けていないダンボール、遊ばなくなったおもちゃを置くためだけに、私たちは数百万円という大金を支払い、その空間のためにローンを払い続けている。不要なモノを溜め込む行為は、「部屋が散らかる」という問題にとどまらず、人生の貴重な資産やお金を大きく浪費していることと同じなのです。

荷物を減らす努力|溜め込まないための「3つの仕組み」


モノがあふれたとき、安易に「収納スペースを増やそう」「リフォームで棚を作ろう」と考えるのは危険です。建築費が跳ね上がるだけでなく、結局その新しいスペースもいつかモノで埋まってしまいます。必要なのは収納を広げることではなく、家の中に流れるモノの量をコントロールする「仕組み」と「習慣」です。

  • 不必要なものは最初から家に入れない 買い物をする際、「欲しい」ではなく「必要」かを問い直す。「安さ」や「限定」に惑わされず、手放すときのことまで想像できないものは買わない意識が大切です。
  • 買ったら手放す(ワンイン・ワンアウト) 新しい服や靴、おもちゃを1つ購入したら、既存のものを必ず1つ手放す。総量を一定に保つルールを作らなければ、家族が増えた家庭でのモノの増加は防げません。
  • 「保留箱」を活用し、判断の迷いを減らす 捨てるか迷うものは期限を定めた「保留箱」へ。「1年使わなかったら自動的に手放す」といったルールを設定することで、断捨離の判断で手が止まるのを防ぎます。

収納を増やす前に考えたい「空間」の本当の価値


荷物を減らす努力とは、決して暮らしを制限したり、殺風景で寂しい部屋にすることではありません。むしろ、自分や家族にとって「本当に価値のあるもの」を引き立たせるためのポジティブな作業です。

モノを減らすことで、掃除や片付けにかかる時間、失くしたものを探すイライラは劇的に減少します。何より、「使わないモノの倉庫」としてデッドスペースになっていた空間が解放されれば、そこは家族が心地よく集まれる場所へと生まれ変わります。住宅ローンとして支払っている空間の価値を、本来の目的である「豊かで快適な暮らし」のために100%活用できるようになるのです。

おわりに


マイホームに定住し、家族のライフステージが変化していく中で、かつての「引越しによる強制リセット」に頼ることはもうできません。野放しにすればモノは静かに蓄積し、あっという間に家の中にブラックホールを作り出してしまいます。

不要なモノを置くための空間に、貴重なお金を払い続けるのは本当にもったいないことです。間取りを変えたり、収納グッズを買い足したりする前に、まずは日々の生活の中で「買わない」「溜めない」「買ったら手放す」という意識を持つこと。

もしあなたのお住まいにも、知らず知らずのうちにできた「ブラックホール」があるなら、今日から小さく、荷物を減らす努力を始めてみませんか?空間のゆとりは、必ず心と暮らしのゆとりとなってあなたに返ってくるはずです。

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