1案に懸ける家づくり|なぜ複数提案しない?【茨城・千葉|注文住宅】

木のカウンターに設けられたシンクと水栓 家づくりコラム

複数提案をしない理由と「答え合わせ」の話

「え、なんで最初の提案で一案しか出さないの?」

工務店やハウスメーカーを探しているお客様から、ときどきそんな驚きの声をいただくことがあります。

確かに住宅業界を見渡してみると、最初に「A案、B案、C案」といくつかのテイストの違うプランを並べて、「どれがお好みですか?」と選んでもらう会社も少なくありません。その方が選択肢が多くて、親切なように見えるからだと思います。

でも、私は最初のお客様へのご提案で、必ず「1案」しかお見せしません。

あえて 1つのプランに絞り込んでお客様の前に差し出すのには、理由があります。それは、自分勝手なこだわりではなく、住まい手であるお客様に対して「本当の意味で誠実でありたい」と考えているからです。

今回は、私がなぜ「1案の提案」にこだわっているのか、その理由をお話しさせてください。

頭の中で10パターン以上を「描いては潰す」プロセス

そもそも設計という仕事は、真っ白な紙にただ綺麗な線を引くことではありません。

私が最初に行うのは、お客様の言葉にできない想いを丁寧にすくい上げることです。事前にじっくりとお伺いした暮らし方、ご家族の距離感、敷地が持つ光や風の条件、予算の感覚。それだけではなく、打ち合わせのときにお客様がどんな言葉を自然に使われているか、どんな瞬間に楽しそうな表情をされるか。そうした日々の積み重ねを、一つのカタチにしていくのが設計です。

そのプランを考えているとき、私の頭の中では、ものすごい数のシミュレーションが始まっています。

「Aの配置で行けるかな。いや、これだと冬の光が奥まで届かないな」 「じゃあBの発想に変えよう。……いや待てよ、外からの見た目の美しさを大切にするなら、Cの方向が良いかもしれない」

頭の中の図面上で、壁を建てては壊し、窓を開けては塞ぐ。10パターン、多いときはそれ以上の空間を組み立てては、自分でダメ出しをして消していく。この「描いては潰す」の繰り返しを何度も行います。

そうして何度も何度も自分で見直した末に、ようやく「これだ。このご家族に一番寄り添える家は、これしかない」と自信を持てる1案が仕上がります。

「あえて一晩寝かせる」という、客観的な視点

しかし、「最高の図面が描けた!」と思った瞬間が、一番気をつけなければいけない時間でもあります。ここでそのままお客様にお見せしてしまっては、プロの仕事としてはまだ未完成です。

なぜなら、人間は自分が一生懸命作ったものに対して、どうしても愛着が湧きすぎてしまうからです。自分の作品が可愛くなりすぎて、図面を冷静に見ることができなくなってしまうのです。

だからこそ、私は描き上げた図面を、一度あえて一晩「寝かせる」ようにしています。

翌朝、まっさらな気持ちでもう一度その図面を見直します。すると不思議なことに、「あ、やっぱりここの動線が少し使いにくいな」「この窓の位置だと、外からの視線が気になるかもしれない」といった改善点が、必ず見つかります。

「自分じゃない誰かが、このプランを初めて見たらどう感じるだろう?」

一度気持ちを落ち着かせて、客観的な視点で見直す。このステップを経てしっかり磨き上げられた図面になって初めて、お客様にお見せする「初回提案」の図面になります。

選択肢が多いほど、お客様を迷わせてしまう

では、なぜ最終的に「1つの案」に絞り込まなければならないのでしょうか。理由はとてもシンプルです。たくさんのプランを並べられても、お客様は選ぶのが難しくなってしまうからです。

プロである設計者が、自分の中でも「これでいく!」と確信を持てていないプランをいくつか並べて、「さあ、どれがいいですか?」と選んでもらう。それは一見、自由度が高くて親切に見えるかもしれません。

しかしそれは、設計者が「決める責任」をお客様に任せてしまっていることにもつながります。

建築の専門家ではないお客様が、複数の図面を前にして「何を基準に選べばいいのか」を見極めるのは本当に大変なことです。「あっちの要素もいいし、こっちの要素も捨てがたい」と悩む時間は、楽しさよりも、ただ迷って疲れてしまう原因になります。

それよりも、設計者が「みなさんの暮らしにぴったりなのは、この家です」と責任を持って1案を提案する。そのしっかりとした軸があるからこそ、お客様も「ここはすごく好き」「私たちの生活スタイルだと、ここはもう少し広くしたい」という、具体的なお話がしやすくなります。軸がしっかりしているからこそ、その後の修正の進み方もずっとスムーズになります。

初回提案はゴールではなく「最初の答え合わせ」

誤解してほしくないのは、「私が1案しか出さないのは、自分の設計を押し付けたいからではない」ということです。もちろん、最初のご提案で100%すべてが決まり、一発で完成するわけではありません。

初回提案というのは、家づくりという長い道のりにおける、あくまでも「最初の答え合わせ」の場です。

私が心を込めて作った提案を前にして、お客様がどう感じられるか。 「そうそう、こういう空間に憧れてた!」という笑顔かもしれないし、「考えてみたら、ここはもう少し落ち着ける空間の方がいいかも」という新しい気づきかもしれません。

その生の声を聞きながら、さらにプランを一緒に磨いていくことこそが、本来の正しい家づくりの流れです。ただ、その土台となる最初の1案がどれほど深く練られているかで、その後に続くお打ち合わせの質はまるで変わってきます。中途半端な3案を出すよりも、深く考え抜いた1案を出す方が、結果的にお客様にとっても最高の近道になると信じています。

「設計が早い=良い家」ではない

今の時代は、何事にもスピードが求められます。しかし、一生に一度の家づくりにおいて、「設計のスピードが早いこと」が一番大切なわけではありません。

パパッと短い時間で引いた図面と、何日も練りに練って、一晩寝かせて、また朝起きて描き直した図面。

一見、紙の上に描かれた線の形は似ているように見えても、そこに込められた優しさや暮らしやすさの工夫がまったく違います。この地道なステップをどれだけ踏んだかが、実際に家が完成し、何年、何十年と住み始めてから「あぁ、やっぱりこの家にして良かったな」と心から思える住まいになるかどうかの分かれ道になります。

もし、あなたがこれから一緒に歩む工務店や設計事務所を探している最中なら、ぜひ候補の会社に一度、こんな質問をしてみてください。

「最初のプランをいただけるまで、どのくらい時間がかかりますか?」

「すぐに出せますよ」と答える会社が良いのか、「じっくり時間をいただきたいので、2週間から3週間はかかります」と答える会社が良いのか。

その答えの裏側にある時間の捉え方に、その工務店が、お客様のこれからの人生にどれだけ誠実に向き合おうとしているかという姿勢が、まっすぐににじみ出てくるはずです。

おわりに

私は、ただ雨風をしのぐための箱をつくっているのではありません。

そこでこれから何十年と続いていく、ご家族の何気ない日常や、たくさんの笑顔を受け止めるための「暮らしの器(うつわ)」をつくっています。

だからこそ、お客様を迷わせてしまうような、中途半端な選択肢はいらないと思っています。

私はこれからも、みなさまの未来のために考え抜き、選び抜いた「最高の1案」をお届けしていきます。その1案から、あなたの本当の家づくりを一緒に始めましょう。

まずは、住まいを五感でご体感ください。

ご案内するのは建築士本人。しつこい営業・訪問は一切いたしません。

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