杉板外壁のメンテナンス費用|経年美化とメンテ費用は?【茨城・千葉|自然素材の家】

深い軒と板張りの外壁。見上げた先に広がる木々と青空 家づくりコラム

外壁を「杉板縦張り」に一本化した理由

家づくりにおいて、外観の印象を大きく左右し、家そのものを守る役割を担う「外壁」。先日、私がつくる家の外壁仕様を、すべて「杉板縦張り」に一本化いたしました。

効率や手軽さが求められ、工業製品の外壁材が主流となっている現代において、あえて自然素材である無垢の杉板を標準仕様に選んだのには、明確な理由があります。

それは、完成した瞬間が一番美しいのではなく、10年、20年、30年と時を重ねるごとに味わいと愛着が深まる「経年美化」の思想です。木材商として培った「木の目利き」の視点から、杉板外壁の魅力と、それがもたらす本当の豊かさについてお話しします。

職人の手で、一枚ずつ縦に張る

現代の住宅で多く採用されているサイディング等の外壁材は、初期費用が抑えられ、施工もスピーディであるというメリットがあります。しかし私は、あえて「無垢の杉板」を一枚一枚、職人の手で縦に張っていく手法を選びました。

理由の一つは、日本の気候風土、とりわけ海からの風や湿気を感じる茨城・千葉の自然環境にとても適しているからです。木は伐採されてからも呼吸を続けています。湿気の多い夏には水分を吸い、乾燥する冬には水分を放出する。杉板は家全体を包み込む「自然のフィルター」のような役割を果たし、壁の内側の結露を防ぎ、家が健やかに呼吸するのを助けてくれます。

また、「縦張り」にすることで雨水がスッと下に落ちて水はけが良くなり、木の耐久性をさらに高めることができるのです。深い軒と組み合わせることで、強い日差しや雨から外壁はそっと守られ、長寿命な住まいが実現します。

シルバーグレーへとうつろう、経年美化の物語

杉板の外壁と聞いて、「腐らないか」「色褪せが心配」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、無垢の杉板は雨やおひさまを浴びることで、最初のあたたかな木目色から、少しずつ落ち着いた「シルバーグレー(銀灰色)」へと変化していきます。

しかし、これは決して「劣化」ではありません。自然界の厳しい環境から自らを守ろうとする木の自然な営みであり、美しい「経年美化」の過程です。

日本の古民家や歴史ある神社仏閣が、長い年月を経て独特の風格を漂わせているように、シルバーグレーに変化した杉の家は、周囲の植栽や緑豊かな街並みにしっとりと馴染んでいきます。春の新緑、秋の紅葉、冬の澄んだ空。どの季節の風景とも美しく調和し、住まうご家族の歩みとともに、他に一つとない豊かな表情を育てていくのです。

メンテナンス費用から考える、30年先の安心

私が杉板を選ぶもう一つの大きな理由は、「建てた後の暮らしのゆとり」を守るためです。

一般的な工業製品の外壁材は、10年〜15年ごとに表面の塗装や、目地のシーリング(継ぎ目を埋めるゴム状の素材)の打ち替えが必要になります。このメンテナンスには、足場代も含めるとまとまった費用がかかることも少なくありません。

一方、杉板縦張りの外壁は、継ぎ目にシーリング材を使わない伝統的な工法を用いるため、定期的な打ち替え費用を大きく抑えることができます。もし木が傷んだ場合でも、大掛かりな工事ではなく、その部分の板だけを「一枚単位」で張り替えることが可能です。

家は建てて終わりではありません。建てた後も、ご家族で旅行に行ったり、趣味を愉しんだりする「ゆとりある時間」が続くこと。それこそが、私が目指す「お金の安心」です。30年先までのトータルな維持費を見据えたとき、杉板の外壁は非常に誠実で、理にかなった選択と言えます。

同じ杉でも、育ちが違えば表情が変わる

杉板を標準仕様にできるのは、素材を見極められるからです。私は設計者である前に、木材商として丸太一本一本と向き合ってきました。

同じ杉でも、育った場所や年輪の詰まり方によって、経年変化の表情はまるで違います。日当たりの良い斜面でゆっくり育った木は年輪が詰まり、水を吸いにくく反りにくい。逆に養分の多い場所で早く育った木は、目が粗く、動きが出やすくなります。

外壁に使う板は、この違いがそのまま30年後の姿に表れます。どの面を外に向けて張るか、木裏と木表のどちらを見せるか。図面には書ききれないこうした判断の積み重ねが、10年後、20年後の外壁の落ち着きを決めていきます。

「経年美化する」と言葉で言うのは簡単ですが、それを実現できるかどうかは、素材を選ぶ段階でほとんど決まっています。

一緒に時を重ね、愛おしい毎日を紡ぐ家

真新しい服も良いものですが、何度も袖を通し、自分の体に馴染んだリネンのシャツや使い込んだ革靴のように、時が経つほどに愛おしくなる家。それが私の理想とする住まいです。

深い軒の下で、雨風からそっと守られながら歳月を刻む杉板の家。休日の朝、庭の木々に水をやりながら、少しずつ表情を変える外壁を眺める満ち足りた時間。

「10年前より、今の家が一番好きだな」。そう心から感じていただけるよう、年間4棟限定という静かな矜持を胸に、一邸一邸、誠実に向き合ってまいります。

塗り替えより軒で壁を守る、私の理由

外壁を長持ちさせるのは、良い塗料でしょうか。それとも別の何かでしょうか。杉板を守っているのは、塗料ではなく屋根です。私は軒の出を、ケラバも含めて基本90センチ(900ミリ)以上としています。雨仕舞をよくして壁を濡らさないこと、そして紫外線から板を守ること。メンテナンス費用は、この二つでほとんど決まります。南面に大きな窓がある場合は、窓の高さに窓の上から軒の裏側までの高さを足し、その合計に0.3を掛けた寸法を目安にします。

軒が深ければ、雨は壁を直接叩きません。メンテナンス費用の話は、塗り替えの周期だけで決まるのではなく、そもそも壁がどれだけ濡れずに済むかで決まります。窯業系サイディングを扱わないのも、塗り替えを前提とした材料だからです。

杉板外壁については、経年変化で色がどう進むか建物の形とセットで選ぶ視点もあわせてご覧ください。

おわりに

杉板が織りなす光と影のうつろいや、木の心地よい香りは、写真ではお伝えしきれません。ぜひ一度、秋津のシンボルハウスでご体感ください。

皆さまと、豊かな住まいの物語を紡げる日を楽しみにしております。

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